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Vol.2 1990年代 北欧スタイルへ

 

アンティークやカントリースタイルから、アメリカンミッドセンチュリーや北欧家具へと移り変わり始めた1990年代。当時感じていた時代の変化について伺ってみました。

 

 

スタッフ:現在カーフのオリジナル家具の背景にあるのは北欧家具ですが、そこに惹かれた理由はどんなことだったのでしょうか?

 

 

(島田)五反田の線路沿いにあった店の時代は、アンティークテイストやパイン材を使ったカントリークラシックな家具を作っていたんですけど、少しずつ時代の潮流も変わってきて、その頃の目黒通りの家具屋もミッドセンチュリーやモダンな家具を扱う店が増えていましたね。アクメさんも昔はカントリーとかクラシックテイストの家具が多かったんですが、だんだんミッドセンチュリーの家具を扱うようになってきたりして。

そういう時代が変わりはじめていたときに、自分たちのオリジナル家具も少しシンプルなものが増えつつありました。

 

デザインも色々トライしていたんですが、最初に作ったアンティークとかカントリーテイストの家具がお陰様で結構ヒットしていたので、なかなか脱却できずにいて。ほら、演歌歌手の方が歌謡曲を歌うようになったとしても、お客さんからは「あのヒット曲歌って!」みたいになるでしょう。そういう現象が起きていて、そこで悶々とした日々を過ごしていたんです。

 

だから『イメージを変えるには、場所を変えなきゃ駄目だ!』となって、その時ちょうどココ(現在の目黒店)を見つけて、いろんな事が重なって移転することができたんです。

 

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移転当初のカーフショップ

 

(幾子)でも、移転してもまだアンティーク・カントリー・クラシックスタイルの時代は結構長く続いていたんですよ。人気もあったし。目黒に移って来た当初は、1階の奥の方にはパイン材の家具を置いていて。2階はわりとミッドセンチュリーな感じで、そこにインダストリアルなものも入れていたりしていました。

移転当初は、ひとつのショップの中に3つ柱があった感じですね。『カントリークラシックの名残』と『北欧やアメリカのミッドセンチュリー』そして『インダストリアル』。ここで初めてスチールの事務機とかも入って。

 

 

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1階フロア奥にあったカントリースタイルの家具

 

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北欧スタイルを取り入れ始めた頃のオリジナル家具

 

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北欧ビンテージファニチャー

 

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インダストリアル・メタルファニチャー

 

 

(島田)その頃、LAなどでもカントリー系アンティークショップだったところが、北欧系になっていたりしたから、トレンドが変化していた時期でもありましたね。

クラシック・カントリーからモダン・ミッドセンチュリーに切り替わり、イームズやジョージ・ネルソンなどのアメリカンミッドセンチュリーから火が付き始めて。そこからだんだん北欧モダンに移っていった、という感じで。プラスチックとかスチール素材といった現代的なマテリアルに一旦振れて、そのあと北欧の木質系になっていく、そんな流れだったと思います。

 

でも僕は、LAで最初に北欧家具を見たときは「北欧家具?へ〜」「すごいな〜この作り。」「こんなマニアックな家具売れるの?」って、なっていたんです。シンプルでストイックなデザインだし、かなり大人っぽい感じに思えましたよ、当時の僕にとっては。

 

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デンマークのビンテージ家具ディーラーにて

 

(幾子)私は、クラシック系から北欧に移行するとき、自分が育った家が今思えば北欧風だったので実家へ戻ったような感覚が強かったです。

実家の家を建てた時に家具を決めたのが母で、おそらく、当時東京などで流行っているものを取り入れたんでしょうね。そういう家具に囲まれて育ってきたから「北欧家具」と云われると実家のイメージが強すぎて、自分の中では新鮮じゃなくて。当時は本物との違いもよく分っていませんでしたしね。(笑)

 

 

(島田)その時代時代でトレンドがあるので、それが伝わってきて自分の関心も変わっていきましたね。オリジナル家具のデザインにも多少影響は出ていたと思います。

僕自身いい意味でミーハーなんですよ。別に『カントリーの家具しかやらない』と決めていたわけでもなかったですし。ただベースにある『本物の素材感や経年の変化によって味が出るものを作る』という点は変わらず一緒です。

 

気をつけているのは、トレンドだからといって、必要以上にそこを強調しすぎないこと。自分が受け入れられる程度のシンプルさで作るということ。それらを念頭にちょっとずつテイストを変えたりしています。

 

僕の中では北欧モダンの家具も、イギリスのクラシックなスモーカーズチェアも、ある意味では一緒。どちらもその時代の中でできる最大限のスキルが詰まっているものでしょう。木を切り出して、一つ一つ手作りして、当然個体差も多少出てくるけど、それもまた味で。『その時代の人たちが一生懸命作っていたもの』そういった意味で、北欧のミッドセンチュリー家具も、1800年代のイギリスのクラシックな家具も、僕にとっては同じ感覚で見えているんです。

 

 

 


 

時代によってデザインやスタイルが変わったとしても、『素材を活かしてシンプルに作る』という根底が変わらなければ、どんな時代を迎えたとしても、これが現在(いま)のカーフなのだと示すことはできる。そんな事を思った今回でした。

次回「普遍であること」では、島田代表が家具をデザインする上で大切にしていることなどについてのお話です。お楽しみに。

 

 

karf History 〜カーフスタイルができるまで〜

Vol.1 1980年代 創業と初期のオリジナル家具
Vol.2 1990年代 北欧スタイルへ
Vol.3 普遍であること
Vol.4 デジタル時代のモノづくりに思うこと
Vol.5 ビンテージ家具とBlackboard